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手助け

コリーン・ダルトン

今日の心の糧イメージ

 飛行機の乗り継ぎの際に、せわしなくコーヒーをもとめて並んでいたときのことです。前の人が振り向いて、私に何を注文するのかと丁寧に尋ねてきます。1、2秒して、あなたにコーヒーを買いましょうと申し出ているのだとわかりました。でも、なんで?と訝しげに思っているとその人はギフトカードがあるので、とつけ加えました。

 「カードを二人用に使った方がよくないかって。一人分よりも。」

 一瞬ためらってから、お礼を言いました。数分後、私はコーヒー片手に搭乗ゲートに向かって、ゆったりと歩いていたのです。

 空港での昼下がり、私は12時間に及ぶ飛行機の長旅で疲れ、乗り換え便にもうんざりしていました。

 とは言っても、ポケットにはコーヒーを買うお金も、接続便待ちの時間も充分にあり、これといって手助けの必要もありませんでした。それでもちょっとした出会いやつながりのおかげで、見違えるほど気が楽になったのです。

 最近友人がこんな話をしていました。夫と共に今年のモットーに「軽くする」という言葉を選んだそうです。言葉と行いをもって、身近な人々の負担を「軽減」したいという意図です。初めはなんてむずかしいゴールかと感じました。近しい家族や友人、自分たちの負担でさえよくわからないのに、他の人々の心身にのしかかる重荷などわからないのが常ですから。でも、空港での午後、あの小さな親切を示す簡単な行為によって、私の歩みが軽くなったではないですか。

 今日世界が複雑になり、あまり関わりをもたない方が安全だと感じる理由を並べるのは簡単です。それでも、私たちの負担を和らげ気分を高めてくれるのは、福音書の辛子種の譬えにあるような、ほんの小さな行為なのでしょう。(参マルコ4・30~32)