今から13年前、息子の周が誕生してまもなく、医師から遺伝子の検査を勧められました。やがて染色体の写真を私たちに見せて、「息子さんはダウン症です」と告げました。
高齢出産を案じていた年上の妻は、「ごめんね...」と言い、涙を流しました。私は〈これは夢ではないか...〉と、一瞬、目の前が真っ暗になりました。ですが、これから母親になる妻が絶望する姿を見て〈これはいけない〉と思い、「大丈夫。一緒に周を育ててゆこう」と、私は妻の傍らに立ち続け、支える決意をしました。
周は1ヶ月間の入院となり、私たちは毎日面会に行きました。ある日俯いたままの妻に、ある若い看護師さんは「ママ、しっかりしなさい!周君の母親は世界にあなた一人しかいないのですよ」と言いました。厳しくも愛情の込もった言葉に、妻は目が覚めた思いがしたようでした。
私も自分の気持を整理するために恩師に電話をして、息子がダウン症であることを報告しました。先生は、「人より1本多い染色体に、神様からの深い次元の願いが託されているのかもしれません」と語られました。
私は電話を終えた後、心の声で〈確かにありのままの周を、この両腕にあずかりました──。〉と、天に向かって叫びました。その時、胸の奥に今迄とは違う次元の希望が芽生えたのです。
そして、〈いつか詩に記し、必ず本にする〉と誓いました。この体験から、人は目的地があれば絶望から立ち上がり、希望へ向かって歩いてゆけることを知りました。
周は多くの人々に支えられて、現在は中学生になり、特別支援学校に通っています。今も生活で多くの介助が必要ですが、夫婦で協力して周と共に3人で、この日々を生きてゆこう、と願っています。