一枚の布に、さまざまな色の糸で美しい模様を縫い上げていく刺繍。わたしたちの人生は、その刺繍を裏側から見ているようなものだといった人がいる。どんな美しい刺繍でも、裏側から見れば、絡み合った糸が並んでいるだけで、表にどんな美しい模様が描かれているのかわからない。それと同じで、わたしたちの人生も、生きているうちに地上から見ると、一つ一つの出来事にどんな意味があるのか分からない。しかし、天国にいって上から見れば、すべての出来事が全体として美しい模様を作り出していたことがわかるというのだ。
刺繍の作者は神さまだと考えてよいだろう。神さまは、わたしたちの人生のさまざまな出来事を通して、刺繍を一針一針、丁寧に縫い上げていく。しかし、わたしたちは、その一針の意味がわからないので、「なぜ、わたしにこんなことが起こるんだろう」と考える。
辛いことが続いたときなどは、「こんなことを続けても意味がない」と思って、あきらめたくなるときさえある。そんなときに、この「人生は、美しい刺繍を裏側から見ているようなもの」という言葉を思い出したい。いま自分には意味がわからなくても、神さまがなさることには必ず意味がある。そう信じて、最後まで刺繍を仕上げること。最後まで生き抜くことが大切なのだ。
物事がなかなかうまく進まないときは、神さまが特に入念にその部分を仕上げているときだと考えたらいいだろう。天国から刺繍の全体を見たとき、その部分はきっと、全体の中でも特に美しく見えるはずだ。いつの日か、天国から刺繍の全体を見てにっこりほほ笑む日がやってくるそう信じて、人生の刺繍を一日一日、丁寧に縫い上げていきたい。