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光と影

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

 「光あるところに影もあり」とはよく言われます。影は光によってできるからです。このことは、私たちの人となりにも当てはまることだと思います。

 私の経験から、「光と影」にまつわるエピソードを分かち合いたいと思います。

 幼少の頃から、私は、自分はずっと暗い人間だと思いこんでいました。子どもの頃を思い出す度に、いつも緊張し、人ともうまく関われない、淋しい、影のイメージを持っていましたが、あるワークショップを機会に、その思い込みは、実は光の中で抑圧されたイメージだったことに気づき、私は、持ち続けてきた影のイメージから解放されました。

 小さい頃に住んでいた家を具体的に思い出すセッションがありました。私が育った家は、とても古くて大きくて、使っていない階段や部屋もあり、今ならぜひ探検したいような気持にもなりますが、子どもには怖くて、親にも怒られそうで、めったに出入りすることもありませんでした。

 しかし、セッションの中で、家の間取りを描き、具体的な説明をしていくうちに、決して積極的に踏み入ろうとしなかったほこりだらけの階段や部屋に、本当は行ってみたかった、子どもらしい遊び心、いたずら心が沸々とよみがえってくるような不思議な体験をしたのです。その時私は、自分が本来持っていた光、天真爛漫なかわいらしい自然体の子どもである私にやっと巡り会えたような感動を覚え、涙がこぼれました。

 野原を駆け巡る元気いっぱいの明るい私、いろいろなことに興味を示す好奇心旺盛で無邪気な子どもの私は、私の内側にしっかりと存在していたのです。そして、その気付きは、不思議なことにそれからの私に大きな力を、生きる力を与えてくれています。