私はかつてある大学で哲学や神学を学んでいたとき、自然というものは神さまが人間のために創造なさったものなので、本来は尊く良いものであったが、人間の悪意や迷惑行為によって、堕落したものになってしまった、と教わりました。ですから、今や自然そのままは良くないことだと思い込んでいました。そのため、自然に感謝することなどしませんでした。
しかし、それは完全に間違っていました。自然は神の現れであるともいえるほど、恵みに満ちています。また、山や川などを指す自然だけでなく、人間の中にも自然の力があることを、私のささやかな体験で訴えたいと思います。
私は学校を卒業して出版社に就職し、社会人となりましたが、東北の田舎の出身を気にして、人とうまく話すことが出来ませんでした。
対人恐怖症で心を病んでしまい、1年位、悶々としていました。
そんなある日、戦後、赤本といって家庭医学の本があったのですが、その本を繙いていると「自然治癒力」という言葉に出会いました。それによると、「抵抗療法」といって、困難に立ち向かってみれば、自分自身の中から自然に癒しの力が働くということでした。
それで、人とうまくしゃべれないと悩んでいたが、しゃべってみなければ分かるまいと、思い切って何でもしゃべってみました。すると、意外にしゃべれるのです。その瞬間、心の暗闇が無くなりました。
それからというもの、対人恐怖症も無くなり、他人との交渉も、仕事もうまくゆくようになりました。
大自然に病気を癒す力が宿っているなら、人間の心の自然なあり様にも、物事をよりよくする力があるに違いないと気づきました。
いつも自然に感謝しながら、物事に正面から取り組むように心掛けています。