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人との絆

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 教会にも高齢化の波が押し寄せ、日曜日に行われるミサに参加できない人が増えてきた。病気や免許証の返納などさまざまな理由で教会まで来られない人たちとどうつながっていくか、それが教会で働く神父であるわたしの、現在の最大の課題だ。

 一つの大切な手段は、教会通信を毎週、郵送することだ。その週に読まれた聖書の箇所や、説教のプリント、教会の出来事を書いた週報、教会の庭に咲いた花の写真などを入れた厚い封筒を、毎週、その人たちのもとに発送している。そのようにして最低限のつながりを維持し、数ヶ月に一度、実際にわたしや教会の仲間たちがその人のもとを訪ねる。そうやって、教会との絆を守っているのだ。

 先日、そのような方の一人を訪ねたとき、はっとすることをいわれた。「毎週、教会通信を送ってくださるのを楽しみにしているけれど、何よりありがたいのは、わたしのために毎日、祈ってくださっていることです」というのだ。確かに、わたしは毎日の祈りの中で、病気で教会に来られない方たちのために祈る。だが、それだけでは不十分だろうと思って、さまざまな工夫をしてきた。目に見える何かが必要だと思ったのだ。この一言は、そんなわたしに、何より大切なのは目に見えない祈りでのつながりだということを思い出させてくれた。

 わたし自身、苦しい時には、その方たちがわたしのために祈ってくださっていることを思い出すようにしている。誰かが祈ってくれていると思うと、心に力が戻ってくるのだ。祈り、祈られ、互いに力を与えあいながら困難を乗り越えていく。そこに教会の原点があるのではないだろうか。目には見えない祈りの絆を、より一層大切に守っていきたい。