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人との絆

崔 友本枝

今日の心の糧イメージ

 外国に巡礼に行ったときのことです。バスで隣になった小柄なフランス人の方と親しくなりました。彼女は70代くらいに見えます。揺れるバスの中で集中して本を読んでいたので知的な方だと思いました。

 その女性は、フランス語だけでなく英語も話せたので、私たちは簡単な会話を楽しみながらシナイ山のふもとに向かいました。

 到着してから博物館までタクシーに乗りたい人は手をあげるように、というバスガイドのアナウンスがありました。ほとんどの人が手をあげましたが、彼女は手をあげませんでした。すると後ろの席の若い男性たちが「タクシーに乗った方がいい。何歳だと思っているんですか」と言ったので「歩く方が足にもいいわ。ずっと座っていたから」と答えています。彼らは「やめておいた方がいい」と笑いながら言います。そこには冷やかすような調子がありました。

 私は彼女が傷ついたのではないか、と心配になってそっと横を見ると話すのをやめて目をつぶって祈っているようでした。ほんの30秒くらいのことでしたが、目を閉じたままにっこりと微笑んで「はい」と言うのを耳にしました。彼女はイエスさまと親しく語りあっていたのではないかと思います。

 男性たちの態度に多少なりとも傷つき、優しいイエス、私たちを愛するあまり人となられ、拒絶と侮辱を受けられた方に心を向けて慰められ、これでいい、と笑顔になったのではないでしょうか。その後は何事もなかったようにまた静かに本を読んでいました。私はこの方にとても深いレベルで通じあうものを感じました。

 神さまとの深い交わりをもつ人とはどこで出会っても兄弟のような絆を感じます。