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人との絆

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 神父の上司にあたる司教から、「先日、『ミッションスクールで結婚式をしたいがお世話になった神父さんに司式してほしい』と頼まれたんだけど、どうも私ではないようだ。同じ姓の君じゃあないか?」と声をかけられました。私は「少し調べてみます」と答え、これまでの研修会ファイルを開いてみました。私は、学校での研修会のファイルを残しておき次に活かせるようにしているので、そのミッションスクールで行った行事を片っ端から調べてみました。すると、その方の名前が載った20年ほど前のプログラムが見つかったのです。

 「どうも私が関わっていたようです」と司教さんに連絡すると「じゃあその結婚式は君が司式してください」と仰って、私が代わって司式することになりました。

 初夏の暑い日、冷房が効かないそのミッションスクールの聖堂で、出会いを覚えていてくれた新婦さんのために、丁寧に研修会のエピソードも入れた結婚式を行ったのです。しかし長話が災いしてか、披露宴に行く前に、新婦さんが体調を崩してしまったらしいと後で聞かされました。私は申し訳ない、とひたすら謝りました。

 彼女は、名字だけは覚えていたが、曖昧な記憶からなんとか探そうといろいろ手を尽くしてくれたようです。そして探し出した私が、格式ばった司祭ではなく、ごく普通の人に感じっれたので、緊張せず安心して式に臨めたとも言ってくれたのです。

 そして、思い出に残る式で感謝していると話してくれました。

 なぜ私を覚えていてくれたのかと聞くと、その研修会で言った言葉「自分らしくあることは大切なこと」の私の一言が心に刻まれたからだそうです。

 心を込めた言葉が人との絆を結びつけていたと感じた出来事でした。