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旅立ち

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 私の小学校の卒業式では、「道」という歌を皆で歌い、感動的だったことが思い出されます。当時は子どもなりに、〈道はこれからも続いてゆく〉と思ったものでした。長い年月を経た今、長い道を歩いてきた経験と共に、これから続く道に想いを馳せています。

 昨年秋、白百合女子大学に講師として招かれました。〈だいぶ年齢の離れた学生の皆様に話が伝わるだろうか?〉という不安をふり払い、まずは自己紹介として、一冊の本や音楽との出会いから、後の人生に影響があったこと、高校時代の失恋、高齢者の介護職で苦労した体験が詩を書く糧となったこと、人それぞれに天から与えられた固有の賜物があること等を語りました。

 その後、私の写真詩集『天の指揮者』から八編の詩を各グループの中で一人ずつ朗読した後、「今の自分の気持ちに近い詩」というテーマで感想を書いてもらい、グループごとにそれぞれ分かち合うと、穏やかな語らいのひと時になりました。

 講義の後、感想を読んでみると、「詩を読む人によってそれぞれ受け取り方があり、新たな発見がありました」「今日の詩から普段気づかなかった人々の優しさを思い出し、今後は感謝を伝えたいと思いました。また、自分自身へのありがとう、という気持ちも大事だと気づきました」「これからは自分を肯定できる気がします」等の反応がありました。

 詩を媒介として、皆様の心の中の大切な本音を共有できることを知り、日常会話よりも深く、分かち合うひと時の意味を実感しています。

 今頃、私の講義に参加してくれた学生の皆様も卒業の季節を迎えているでしょう。あの日に感じた大切なことを胸に新たな日々を自分らしく歩んでゆくことを、陰ながら願っています。