旅立ち

シスター 下窄 優美

　初めて海外に出ることになった時、私は一人で行かなければなりませんでした。乗り換えが必要な経由便であったため、見送ってくださった方の一人は「同じ行き先の人を見つけて、その人について行きなさい」とアドバイスしてくださいました。実際は飛行機の中でそのような人を見つけることができませんでしたが、何とか乗り換えることができ、無事目的地に着くことができました。

　発つ前夜までバタバタしており、新しい生活に向けて考える余裕はありませんでした。また、どのような生活になるのか予想がつかないので考えても仕方のない状況でもありました。ですから、「どうにかなるさ」と呑気な旅立ちでした。

　修道会の中の異動の度に、私たちは旅立ちを体験します。旅立ちの先には新しい生活があるわけですが、今まで体験したことのない何かが待ち受けているような期待あるいは不安を抱くか、どちらも半々という感じでしょうか。いずれにしても「何かが私を待っている」という期待があると思います。

　若い頃はそんな気持ちが強かったのですが、何回も旅立ちを経験してくると、新しい生活は待つものではなく、積極的に自分で築いていくもの、そして、その際のポイントは感謝と喜びを見つけ、深めることだと思うようになりました。私を取り巻く環境を変えることはできませんが、その中に感謝と喜びを見つけることはできます。そうすると次のステップに向けてのヒントや力が湧いてきて、私たちの毎日に期待外れということはなくなるのではないでしょうか。

　旅立ちはこのように、生き方の転換の重要なポイントであり、その気になりさえすれば、何歳になっても新しさをもたらしてくれる恵みの時です。