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旅立ち

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 何かにチャレンジするとき、結構それまでの人間性が問われることがあるに違いないと思います。実は大学入試のことで、私は一番末の弟に大変申し訳ないことをしたのです。

 弟は、高校生の時、軟式テニス部に入っていました。結構な成績を上げていたので、関西では有名な私立大学のスポーツ推薦の枠に入っていました。それを聞いた私は、「スポーツ推薦なんて、甘いこと言わずに実力でチャレンジする方がもっとよい」と、弟を奮い立たせようとしました。

 弟は年を明けてもまだ受験勉強をしていたので、あれ?と思って、「あの推薦入学どうなったの?」と聞くと「兄ちゃんがあんなこと言ったので、推薦を蹴ってしまったよ」と言うではありませんか。

 弟は実は本番に上がる癖があり、高校入試でもワンランク下げて入試していたのを思い出してハッパをかけたのです。

 ところが、ここから調子が狂います。国立大学の共通一次試験では、明日からが受験日と思っていたところ、テレビニュースで今日からと報道したので、弟は「アレッ!」と思ったのだそうです。それほど曜日の感覚が狂っていました。

 びっくりして、受験票を見てみると確かに今日からで、日時を間違えて失格となりました。私立大学の一般入試では、推薦を蹴った大学は、皆滑ってしまいました。結局、一浪となったのです。

 それを聞いて私は、「あんなこと言わなければよかった」と弟に謝りました。そして一浪後も思ったようにいかず、別の大学に入りました。

 兄貴のアドバイスを真に受けて、人生につまずいたような弟でしたが、その後は友達にも恵まれ、私もその穴埋めとばかりに弟を支えました。

 今思えば、弟はとてもよい選択をしたのだと思います。