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旅立ち

シスター 萩原 久美子

今日の心の糧イメージ

 「人生という道を賢明に歩むということは、子どもが道を歩くように歩むことである」(詩人シャルル・ペギーの言葉より)

 二、三歳の子どもと散歩をすると、5分、10分でたどり着くような場所も小一時間かかることがあります。彼らは、道に転がっているどんなに小さな石ころや道を這う小さな虫にも目を留め、大きな驚きや発見をもってそれらを見つめます。子供にとっては目的地にいかに早く着くかよりも、その道々でどのようなものと出会い、どんな発見があったのかが大事なのだと気づかされることがあります。

 新しい道へ旅立とうとする皆さんも、これから歩もうとする道の途中で、時に小さく、時に大きな困難に出会うかもしれません。また、その道で出会う人々は、これからの人生の目標となったり、人生を大きく変えてくれる人であるかもしれません。

 子どもたちがその一つ一つの出会いに腰をかがめてじっくりその時を味わうように、目的地に辿り着くことを急ぐより、時にはその場にじっと留まり、その出会いを噛みしめ、時には寄り道をしながら、その時を楽しむ余裕も必要なのかもしれません。自分の視野を広げてくれるような、人生にとって大切なことは、そうした思いがけないことの中で出会うことが意外と多くあります。

 「幸せとは旅の仕方であって、行先のことではない」という、指揮者ロイ・グッドマンの言葉もあります。自分が決めた目的地ばかりを気にしていたら、本当に大事なものを見失ってしまうこともあります。

 たとえ旅の初めに思い描いていた到着点に辿り着かなかったとしても、人生を振り返ってみた時、無駄のない人生だったと言える、そんな旅になることを祈っています。