就職や転勤などで、慣れ親しんだ環境を離れ、新しい環境に移らなければならない。そんなとき、わたしたちは多かれ少なかれ不安を感じる。新しい場所でもよい友だちが得られるだろうか、働きやすい条件に恵まれるだろうか。いまの環境がよいものであるほど、不安はますます大きくなっていく。
こんな話を聞いたことがある。新しい町に引っ越してきた人が、町の入り口で出会った老人に次のように尋ねた。「前にいた町は、いじわるな人ばかりが住むひどい町で、誰もわたしのことを認めてくれませんでした。この町はどうでしょう」。すると老人は答えた。「この町も、似たようなひどい町だよ。」しばらくして別の人が来て、同じ老人に尋ねた。「前にいた町は、親切な人ばかりが住むすばらしい町で、何もできないわたしにとてもよくしてくれました。この町はどうでしょう。」すると老人は答えた。「この町も、同じようにすばらしい町だ。どうぞお幸せに。」
この老人がいいたかったのは、「自分が住む町がどんな町か、その町に住む人がどんな人たちかは、本人次第で変わる」ということだろう。不満ばかりいって、自分の不幸を町や隣人のせいにする人は、新しい町でも同じことになる。謙虚な心で町や隣人に感謝して生きる人は、新しい町でも同じように幸せに生きることができる。老人がいいたかったのはそういうことだ。
もしいま、「わたしはこんなに恵まれた町で、すばらしい人たちに囲まれて生きている」と思っているなら、新しい環境について心配する必要はない。そのような人は、新しい環境でも、きっと幸せになれるに違いないからだ。まずは、いま自分がいる環境に感謝することから始めたい。