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旅立ち

こいずみ ゆり

今日の心の糧イメージ

 たくさんの人の「旅立ち」を祝うかのように桜の花が咲き、舞うこの季節。

 学校を卒業して社会に出る人、生まれ育った家や町から新しい土地へ向かう人。また人知れず決断し、新しい道へ舵を切る人もおられることでしょう。

 旅立ちという言葉で私の心に浮かぶことがあります。

 私が洗礼を受けたのは大学3年生の時でした。当時指導してくださっていた神父様は、私たち青年に度々こう仰っていました。「キリストに結ばれて神の子となった皆さんは進路を得手不得手や自分の好みで選ぶのではなく、神様があなた方一人一人に望まれる道を知り、その呼びかけに愛を込めて応えて行きましょう。」

 祈りの中で神様のお望みに耳を澄まし、時間をかけて識別するためには、大きな忍耐と賢明な指導者の同伴も必要でしょう。これは容易なことではありませんが、私はこの教えのおかげで、神様の呼びかけに応えて旅立った後にどんな展開が待ち受けていても、神様の豊かな祝福と助けがあることを知りました。旅立ちの前に「神に聴く」ということの大切さは、今も心に刻まれています。

 そしてもう一つ、旅立ちと聞いて思い浮かぶのは「出エジプト」です。エジプトを出る民に神様は行き先を「○○町の〇番地へ行きなさい」と明確には告げられませんでした。旅する民は日毎、神様の導きを信じて約束の地を目指したのです。慣れ親しんだ土地や環境からの脱出。これは現代の私たちも毎日の生活の中で大なり小なり体験する「旅立ち」であるように思います。

 前もって神様のお望みを聴くことと、旅路において目指す地が見えないときも、日々、神様の導きにアンテナを張って進むこと。この2点を心に留めて、旅を続けたいと思います。