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安らぎ

中井 俊已

今日の心の糧イメージ

 日本でもよく知られる聖アウグスティヌスは、若い頃、この世の欲に溺れながらも真理と心の平安を求めて苦悩していました。

 著書『告白録』のはじめに書いています。

 「あなたは私たちを、ご自身にむけてお造りになりました。ですから、あなたのうちに憩うまで、安らぎを得ることができないのです」

 あなたとは、神のことです。聖アウグスティヌスは、自分の体験に基づき、神から逃げたり否定したりしては、決して安らぎを得ることはできない。神のうちに憩うことが大切だと悟ったのです。

 そのためには、誰もが自分の罪を悔い改めることが必要となるでしょう。罪の状態にある時、人は良心に痛みを感じ、悲しみや憤りを覚えます。その痛みや悲しみを拭い去ろうと、酒や薬におぼれてみたり、快楽の奴隷になったりします。感覚がマヒすることで一時的に忘れることができても、罪自体は拭い去ることができず、本質的な痛みや悲しみはいつまでも残ります。

 ですから、神のみ前で謙遜に罪を悔い改めねばなりません。神であるイエス・キリストは、罪人をゆるし、救うためにこの世に来られました。悔い改める私たちを寛容に受け入れてくださいます。罪がゆるされると、この世でも後の世でも、神のうちに憩うことができます。

 まず「洗礼の秘跡」を受けることで、それまでの罪と罰がゆるされ、カトリックで洗礼を受けた信者であれば、「ゆるしの秘跡」がその安らぎを得る道です。

 私たちは、どれだけ失敗し、傷つき、倒れても、再び立ち上がり、何度でもやり直すことができます。ときに迷った羊、放蕩息子である私たちは、神の限りない慈しみによって罪がゆるされ、平安と喜びを取りもどすことができるのです。