昨年、エジプト巡礼に行く機会がありました。初めはかなり逡巡しました。エジプトには馴染みがなく、かけ離れた世界のように感じたからです。しかし、この旅行の目的は「聖書」にありました。
二千年前、ヘロデ王の手から幼いイエスの命を守るため、マリアとヨセフはエジプトに逃れました。その足跡を詳しく知るための旅だったのです。
これまで私は聖家族のエジプトでの生活は、平和で落ち着いたものだと考えていましたが、そうではありませんでした。コプト教会の司祭の講話によると、ローマ兵に追われ、60箇所以上も生活の拠点を移し、2年半もの間、国内を逃げまわったということです。どれほど不安だったことでしょう。洞窟の奥に隠れ住む日々もありました。
ヘロデが病死してようやく帰国できたのです。
エジプトは聖家族を守った聖なる国でした。ザイトゥーンという町では彼らがたどった道筋を地図で見ました。マタイ福音書にはヘロデの息子が王になったので「そこに行くことを恐れた」とあります。その言葉の重みがようやくわかりました。(参 2・22)
私たちは、知らない国や人に対して勝手なイメージを作り上げてしまうことがあります。私もこの巡礼にためらいを感じ、扉を閉じそうになりました。でも、もし神さまが私に望んでおられるなら従いたいと思い、くり返しイエスさまにお尋ねし、友人にも祈りを頼みました。その結果、少しずつ心の扉が開き、巡礼に行くべきだと思えたのです。
新しいことには恐れや不安がつきまとうものですが、神さまが望まれることに従うと必ずよい結果になります。さらに、この旅で一緒にトラブルを解決した仲間とはとてもよい友人になれました。