旅といえば、かつて私は毎年国内外へ数回出かける事が普通でした。それが、2020年から始まった新型コロナウイルスの流行で、全ての人が自由に旅することを自粛しなければならない状況に追い込まれ、3年間が経ちました。今春から制度が緩和され、突然多くの外国人観光客が街にあふれるようになりました。日本人は慎重なので、先ずは近場から、海外旅行は徐々にという人が多いようです。
目的を定めずぶらりと旅に出るのは、自由さとハプニングへの期待で憧れますが、私の場合、ほとんどが仕事がらみです。国内では殉教者の歴史をたどる取材旅行が多く、海外へは、出品している海外展のセレモニーに出席、というのが一番の理由です。
取材旅行では案内してくださる方がある場合が多いのですが、旅は未知の方との出会いが重要で、風景や土地柄も出会った人間の印象で微妙に変わるものです。国内では一度ご縁が出来ると度々伺うようになる場所もあり、歴史のイメージも深まり、大いに制作にも生かされます。
まさにただの旅というより私自身の人生の旅路での出会いだったと納得し、感謝を捧げる体験も数々でした。
海外旅行での楽しみはその土地に遺された美術家の足跡を辿る事です。
レオナルド・ダ・ヴィンチを例にとるなら、イタリアでは、フィレンツェ展の時に彼の出生地ヴィンチ村を訪ね、ミラノ展の時は、最後の晩餐の修復前後を見ました。フランスではアンボアーズ城下にある彼の家、クロ・リュセの臨終の部屋へ・・という具合です。
偉大な作家の足跡からは多くの感動と勇気と学びがあります。メキシコの女流画家フリーダ・カーロが生涯を送ったコヨヤカンの青い家では彼女そのものを感じることが出来、印象深い旅でした。