最近、若者たちのあいだで「タイムパフォーマンス」という言葉がよく使われているという。「タイパ」と省略することもあるようだが、要は、時間の無駄を省くということだ。デジタル時代に生まれ育った彼らには、すばやく必要な情報だけを手に入れることが大切で、長時間の映画などは早送りで見るというのだ。
時間を節約するという考え方は、昔からある。井戸まで水を汲みに行く時間がもったいないから水道を引く。洗濯をする時間がもったいないから洗濯機を使うなど、時間の節約が生活を便利にしてきたことは間違いない。だが、気をつけなければいけないのは、時間を節約したとして、その時間を何に使うのかということだ。節約するということは、無駄を省くということだが、自分にとって無駄な時間とはどんな時間なのか。有益な時間とはどんな時間なのか。それをはっきりさせておく必要がある。そうでなければ、本当は有益な時間を、無駄な時間と決めつけて省略してしまうかもしれないからだ。
たとえば、高齢者とのんびりお茶飲み話をする時間。これは、ちょっと考えると時間の無駄に思えるかもしれない。しかし、その時間を通して得られるその人との人間同士のつながりが、人生の大きな支えになることもある。会話の中で、いま直面している困難を乗り越えるためのヒントが見つかることだってある。そう考えれば、これを省略することは、かえって時間の無駄遣いにつながる。
何が有益な時間で、何が無駄な時間なのか、判断するのはとても難しい。無駄を省いた早送りの毎日では、人生で一番大切なものを見落とす可能性さえある。時間をゆっくり味わい、その大切さを慎重に見極めるゆとりを持ちたいものだ。