旅路

シスター 山本 久美子

　コロナ禍を経て、旅の目的も少し変わったそうです。

　旅は、リフレッシュ、リセットの機会です。旅先の景色に感動し、見知らぬ人と出会い、いろいろな発見があり、その土地でしか味わえない「ご当地グルメ」に舌鼓を打つ、旅は、確かに楽しく、何か新鮮な感動を与えてくれます。刺激的でストレス発散にもつながります。しかし、私は、何よりの魅力は非日常ということのような気がします。

　私たちの人生も「旅」と言われます。旅についてあれこれ思いめぐらしてみると、人生が旅と言われる所以が広がるように感じられます。人生は、短い旅で経験するような出会い、出来事の繰り返し、道中には、山あり谷あり、楽しみや苦労も多々あり、まさに長いスパンの旅です。

　人生は、驚きと喜怒哀楽に満ちています。

　私たちは、毎日の普段の生活を、「日常」と呼び、それが自分の当たり前の生活のように感じています。しかし、人生は旅そのもの、実は、非日常の繰り返しなのかもしれません。

　コロナ禍で、時々、自分に問いかけてきたことがあります。たとえ近くのスーパーまでの行き来しかできなくても、通い慣れた道で見る景色から、何か気づくこと、新しい出会いはないでしょうか。一緒に住んでいる家族や、今日、出会う限られた人々との関わりから、何か学ぶことはできないでしょうか。

　かわり映えのない日常でつまらないと感じるなら、何か「再発見」できるよう出かけて行き、いつもと違う表情を見つけてみる、歩く道や視点を変えてみると、新しい驚き、気づきが必ずあります。人生という旅路、神様からいただくいのちの日々を、もう少し大切に、目と心を開いて歩んでみましょう。非日常の驚きを味わってみましょう。