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導かれて

シスター 谷口 恵美

今日の心の糧イメージ

 祖父が救急車で運ばれたのは私が五歳の時でした。病院での手術の間、祖母と祈りながら待っていたことを覚えています。祖母からもらった、オレンジや緑色の透明ビーズでできたお気に入りのロザリオを持って、祖父の無事を一生懸命に祈りました。振り返ってみると、この時が物心ついて覚えている初めてのロザリオのお祈りでした。その数か月後、祖父は天国に召されました。悲しくて、しばらくお祈りしながら泣いていたことを覚えています。

 それから小学校高学年の頃だったでしょうか。朝、ミサに行くと、玄関で見覚えのない一人のシスターが私に一本のロザリオをくださいました。パールのような光沢のあるうす紫の珠のロザリオでした。

 このできごとは、その後、私の修道召命のきっかけになりました。「修道院に来てみない?」と誘われた時、いろいろと考えたのですが、なぜかこのロザリオのことが心にあり、修道院に入ることを決めました。

 それから私はシスターになり、ロザリオをくれたのがシスターMだったことを知ります。病床にあったシスターMをお見舞いしながら、私がいただいたこのロザリオには、シスターMの私の召命への祈りが込められていたのだな、と感じました。また、このロザリオを通して、マリア様が私をこの道へと導いてくださったのではないか、とも思いました。

 ロザリオによってお祈りに導かれ、ロザリオによって修道召命に導かれ、マリア様はいつも、ささやかな日々の暮らしの中で、優しく、イエス様と共に歩む道に導いてくださっているのだ、と感じます。難しさを感じるときも、うれしさを感じるときも、いつもロザリオを手にしながらマリア様と共にイエス様の道を歩んで行けたらと思います。