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導かれて

林 尚志 神父

今日の心の糧イメージ

 「これローマからのお土産よ、失くさないでちゃんとお祈りしてね」母の妹、叔母が美しいロザリオをくれたのです。

 叔母は子どもの頃、北朝鮮の国境の街新義州で父を失い、家族五名で引き揚げ、苦労を重ねて、修道生活を選びましたが、結核で倒れ断念し、戦後の苦境の中で療養生活を生きました。

 その後、医療従事者として働き抜いたご褒美として、念願のローマ巡礼に行った時、司祭である甥っ子、私への心を込めたお土産のロザリオでした。叔母の信心深さが苦手の私も、ちらっと、失くしたら大変だと思いながら有難く頂いたのです。

 そして、いつでしたか、亡き叔母の形見ともいえるそのロザリオを身に着けて出張に出ました。確か新神戸か新大阪へ向かう新幹線の窓側に座っての時です。

 どうしてか、祈り途中のロザリオを窓枠の下のスペースに置いたのです。祈りを続けなかったのでしょう、不注意にも取り忘れて下車し、雑踏の中を進んで行きました。ポケットに無い事に気付いたのは大分たってからです。窓の下に置いたかもの記憶もあやふやで、遺失届も出しませんでした。それが今朝思い出されたのです。もうずいぶん昔の事なのに・・。

 誰かに拾われたのか、下に落ち、切れてゴミとして扱われたのか。焼却されて溶けてしまったのか。私にはバラバラに成ったロザリオの一つの珠が光って見えるようなのです。この地球上にどれ程のロザリオの珠がバラバラに成っている事でしょう。

 その一つ一つを心の中で繋げながら祈りたいです。あのちょっと苦手な叔母の祈りが導いてくれる祈りです。人間、森羅万象がことごとくばらばらに成らないように、叔母の私への愛の奥に秘められた、神さまからの愛で繋がり直したいです。Ave Mariaと。