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輝く

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 聖書の登場人物の一人で、キリスト教を世界に広めるために各地を旅したことで知られるパウロという人が、「わたしは貧しく暮らすすべも、豊かに暮らすすべも知っています」という言葉を残している。(フィリピ 4・12)貧しくても豊かでも、どんな状況に置かれても幸せに暮らす方法を知っているというのだ。

 「そんな方法があるなら知りたい」という方は多いだろうが、パウロがいう方法は単純明瞭、何事にも感謝して生きるということにつきる。たくさんのものを与えられているときは、そのことに感謝して生き、わずかなものしか与えられていないときは、その与えられたわずかなものに感謝して生きる。そうすれば、道を踏み外すことはないし、いつも幸せでいられるということだ。

 教会の信者さんの中で、この方法をしっかり身に着けているなと思わせる方がいる。80歳をだいぶ過ぎ、配偶者には先立たれて一人暮らし。経済的には豊かなのかどうか分からないが、いつも簡素で、年齢にふさわしい落ち着いた服を着て教会に来られる。

 あまり目立たない方だが、どうしても印象に残るのは、彼女がいつも口元に浮かべている穏やかな笑顔だ。彼女の近くにいると、こちらの心も穏やかになり、自然と笑顔が浮かんでくる。なぜいつもそんな笑顔でいられるのか、理由は改めて聞いたことがないが、おそらく彼女の謙虚な心が生み出す感謝の喜びがその源だと考えてよいだろう。

 今日も生きていられることへの感謝、自分を迎えてくれる場所があることへの感謝、さまざまなことへの感謝が、喜びとなり、笑顔となってあふれだすのだ。

 どんなときでも感謝を忘れず、心に喜びの火を灯して生きる人。そんな人にわたしもなりたい。