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ふれあい

シスター 谷口 恵美

今日の心の糧イメージ

 「肩もみ、最近やってないなあ」先日、小川 糸さん著作の「つるかめ助産院」という本を読みながらそう思いました。

 本の主人公のまりあちゃんは赤ちゃんを身ごもっていて、だけれど心に辛い思いも抱え、ある時、南の小さな島に一人でやってきます。島で知り合った助産院の先生や、仲間との関わりの中で少しずつ辛い思いが癒されていきます。ある日、仲間の一人が海で亡くなります。後で、その仲間がまりあちゃんから肩をもんでもらって喜んでいた、という話しを聞き、もう彼の肩に触れることはできないけれど、その代わり島のお年寄りにしてあげたい、との思いで、デイサービスでマッサージをすることになった、そのような場面でした。

その昔、私がまだ小学生の頃、よく祖母や叔母の肩をもんでいたことを思いだしました。

 反対に、私がピアノの練習の後、姿勢が悪かったのでしょう、肩がこって、母にもんでもらったこともあります。ゆっくりマッサージし、マッサージされながら、何気ないことをゆっくり話すこのひとときは、心地よい「ふれあい」の時だったように感じます。体も心もじんわりと温かくなりゆっくりとほぐれていく感じを、本を読みながら思い出していました。

 本の中で、まりあちゃんは次のように言っていました。「大事なのは心を空っぽにすることだった。ただただ、相手の呼吸に合わせていく」呼吸を合わせながら相手の体の状態、心に寄り添い、手当していく様子が目に浮かぶような言葉でした。

 人との関わりの中で生まれる、心が通い合うようなうれしい時、それを「ふれあい」と呼ぶような気がします。聖書に出てくるイエス様の癒しはまさにそのようなものであったのではないでしょうか。