ふれあいはそよ風のように一人ひとりのそばをさっと通り過ぎ、幼い子どもから大人まで、生きる疲れをやわらげてくれる。
わたしが子どものころ、大好きな絵本があった。絵本の題名は忘れてしまったが、忘れられない一冊だ。
その絵本は、スズメ、ちょうちょ、ツバメなどの一場面を、見開きページで描かれ完結する絵本だった。
スズメのページは、大きな木にたくさんのスズメがいて、本を読んだり、歌をうたったり、オルガンを弾いたりしていた。次のページには、ちょうちょの親子の絵があった。ちょうちょの子どもが母親のところに戻ってきて、ボロボロになった羽を丁寧に修理してもらっている。その次は、ツバメが帽子をかぶりステッカーのついたトランクをもち、遠い国に旅立つ絵だった。
この絵本の三つの場面はずっと心のなかに残っていて、わたしは、子どもたちの止まり木になる場所、楽しく過ごしながらも傷ついた羽を休める場所、そして遠くまで飛んでいける翼を育む場所を作りたいという夢を持った。長い間、準備をして、羽を修理しつつ、彼らの未来の翼を育む塾を始めた。
始めてみると、勉強をしたり、絵本を読んだり、作ったりしているうちに、マザー・テレサのスピーチをしたいという女の子も出てきた。
そんなある日、わたしは左足首を骨折し、全治2カ月と言われた。2カ月過ぎたらもとに戻れると思っていたら、そうではなかった。並んでいる場所で他の人が急に方向転換をしたりすると、わたしの足首が緊張し、痛みが走る。これは大きな発見で、子どもたちが抱えている見えない痛みを察することにもつながった。
ささやかな塾が、互いの心と心のふれあいによって、いつの日にか遠くまで飛んでいく翼を育む場所にしたいと祈っている。