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ふれあい

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

 二人目の子どもを授かった後に、妻が病を得て、寝たきりとなりました。子どもたちがお世話になった保育園は、昼食の主食は家庭が用意するという方針だったので、父親の私は毎朝おにぎりを握って持たせていました。海苔を巻いたものや、シソのふりかけを混ぜたものなど、味だけでなく、見た目の可愛さにも心を配ったことを覚えています。30年以上前の懐かしい思い出です。

 神様から子どもを委ねられた親が我が子に伝えるべきことの中で最も大切なこと、それは「あなたはかけがえのない大切な存在です」というメッセージだと思います。

 心を支える食事の大切さを発信されている伊藤幸史神父様は、手作りのお弁当の魅力について、こう語っておられます。「あなたが大切な存在であることを親から子へ伝える力をお弁当は持っています。手作りのおにぎりを頬張るとき何とも言えない温もりと幸せを感じるのは、単なる空腹を満たす体の糧ではなく、握ってくれた人の愛情を味わうことができるからです」。

 「パック入りおかずを買って帰ったときは、ぜひお皿に盛りつけて食卓に並べてください。ひと手間かけてくれた親の心配りがきっと子どもに伝わるでしょう」と、多忙を極める親への助け舟も出してくださっています。

 キリストは食事の形式でミサを定めてくださいました。食べ物という日常の営みの中にご自身を残してくださったのです。ミサは「パンを割く式」とも言われます。一つのパンを皆で分かち合うことに大切なメッセージが込められているのです。

 私たちの生活が忙しく込み合い、家族が触れ合う時間が少なくなってしまいました。豊かな心を育むためにも、食を通じた交流が大切にされることを願ってやみません。