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生きがい

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

 昨年3月に退職するまで、40年にわたり、カトリック中学高校の教師として働くことができました。子供たちと共に過ごし、成長の手助けをする天職を与えてくださった神様に心から感謝しています。

 カトリック信者ではない家庭が大多数を占める日本のカトリック学校には、キリストの教えを通して、人生において何を大切にすべきなのかを伝える重大な任務が託されています。

 シスター渡辺和子先生は「子供は大人の言う通りにはなりません。大人のする通りになります」と言われました。一人ひとりの生徒が、神の似姿として創造されたかけがえのない存在であることを、教師である私の生きる姿勢で示さなければなりません。善き牧者であるキリストがお手本です。お金が幅を利かせ、弱者が隅に追いやられてしまう社会に迎合することなく、兄弟姉妹である世界中のすべての人が尊重される世界の実現を望み、行動する人として成長できるよう導くことが大切です。

 フランシスコ教皇様は、ある年の「世界青年の日メッセージ」で、若者に向けて、次のような厳しく温かな励ましの言葉を贈ってくださいました。(2014年)

 「皆さんにお聞きします。皆さんは本当に幸福を求めていますか。うわべの幸せにとらわれがちな現代において、私たちは些細なことで満足し、人生は『つまらないもの』だと考える危険にさらされています。そうではなく、偉大なものを求めてください。心を開いてください」

 教師人生を終えて新たな生活がスタートしました。うわべの幸せではなく、他者の喜びを自らの喜びとする豊かな心が幸せな人生に欠かせないことを、私の生きる姿で伝えていくことができるように、残りの人生を、丁寧に、大切に生き抜こうと思っています。