渇き

松浦 信行 神父

　私が神父になってしばらくしたとき、東京の修道院から姫路の方の小さな教会へ転勤となりました。私にとって、初めての一人担当なので、だんだんと心配し始めました。

　なぜ心配だったかというと、私は朝に弱かったからです。毎朝定時に礼拝があると、そのうち寝坊をして、周りに迷惑が掛かるのではと暗い気持ちになりました。

　赴任してみると、ラッキーなことに、その教会はあまりにも小さな教会だったので、平日の朝の礼拝に来る人が無く、前任者は、起きたときに好きな時間に礼拝をしていたのです。それなら私もしばらくは気ままに暮らせると、決まった時間の礼拝は日曜日だけ、と言う体制で始めてみました。

　ところが、１週間経つとどうも調子が変なのです。ずーと一人で好きな時間に礼拝をし、食料の買い出しをしたり、半年後に始まる学校の授業準備などをして・・と、結構やることはいろいろあったのですが、気が乗らなくなってきました。２週間目に入るとますますやる気が起こらなくなっていきました。

　それで、これでは駄目だと、生活を見直すことにしました。信者さんの中の老夫婦が、「私たちの朝の日課は犬の散歩です」と言うのを聞いて、「すみません。犬の散歩の途中でもよいので、朝７時から礼拝式を始めようと思います。出席していただけませんか」と頼んだのです。

　すると不思議、それまでの不調が嘘のようです。だんだんと元気もやる気も出てきました。朝の目覚めもよくなって、生活にリズムが出て来ました。

　後で知り合いのお医者さんから聞いたのですが、生活にリズムが出てくると、やる気も起きてくるのだそうです。私は、生活のリズムに渇いていたのでした。