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渇き

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 2021年、91歳の生涯を終え帰天されたドイツ人のカトリック司祭ウァルデマール・キッペス師。

 65年以上前に初めて来日して以来、生涯に渡り日本におけるパストラルケア、スピリチュアルケアの普及に尽力されました。これは心や魂のケアをするもので、特にパストラルケアは病気の方へのケアであり、聖書にある「良き羊飼い」の意味が込められています。人が根源的に持つ「渇き」について共に寄り添い、心の声を聴かせていただくケアです。在りし日のキッペス師の講座に私も参加しましたが、特に印象に残っている話があります。

 「人間は皆、生まれる前はお母さんのお腹の中で膝を抱えています。その姿は耳の形とよく似ています。生まれる前の赤ちゃんは、胎内でお母さんの心臓の音を聴きながら安らいでいるのです」。

 そう言うと、キッペス師はホワイトボードに一枚の絵を貼りました。それは耳の形を描いたもので、よく見ると確かに「母の胎内にいる赤ちゃん」のようでした。この学びを通して、私は聴くということの深い意味を知りました。

 その後、私は縁のある方の悩みや心の病についての話に耳を傾けるスピリチュアルケアの活動をしています。時には、複数人のメンバーで集まり、互いの思いを語らう場を定期的に催しています。この参加者はさまざまな渇きを抱えた人が、ありのままの自分の内にある声を語り合います。人の痛みを知り、聴き、共有することで力をいただくことがあります。

 人は人との深い交流により「渇き」が癒され、明日へと生きる希望を見出し得ると、私は思っています。キッペス師の学びを継承し、人々の心や魂の声を聴かせていただき、共に分かち合う場を育みたいと願っています。