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シスター 谷口 恵美

今日の心の糧イメージ

 寒い中、散歩をしているとふわっと漂ってくる沈丁花の甘い香り。枯れ木のような枝にぽつんぽつんとある、固い赤茶色のつぼみが少しずつふくらんで、つるんと銀色に輝くような花穂を見せてくれるネコヤナギ。聖堂で静かにお祈りしていると窓の外の林から聞こえてくるウグイスの初々しい鳴き声。

 自然は、春という「時」が来たことを知らせてくれます。寒さに身を縮ませている私たちに、暖かいおひさまの光とともに、自然の仲間たちは姿を見せ始め、命の喜びを運んでくれます。

 春、この自然の営みは、イエス様の復活を祝う私たちにとって、大きな意味を持つように感じます。

 カトリック教会で大切にされてきた祈りの中に、ロザリオの祈りがあります。イエス様の生涯を四つの神秘として黙想しながら祈るのですが、そのうちの一つの神秘、「栄光の神秘」の中でイエス様の復活を黙想して次のように祈ります。

 「イエスは死に打ち勝って復活し、新しいいのちをお与えになります。わたしたちが主とともに死んでその復活にもあずかることができるよう聖母の取次ぎによって願いましょう。」

 生きる中で私たちは冬の厳しさのような時を過ごすことがあります。悲しみや苦しみの中にあって、不安に押しつぶされそうで、生きた心地もしないというような時です。そのような時、苦しみ悲しみを、そばにいて一緒に引き受けてくださるイエス様のことを黙想すると、暗い悲しみに閉じこもっていた自分に別れを告げ、何か心の中に光るものが見えてくるような、新しい命のめばえを感じます。

 暗い寒さの中でもイエス様がともにいてくださり、そのことを通してまたイエス様の新たな命に生かされる、春はうれしい喜びの時となります。