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委ねる

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

( このお話は2022年11月放送のお話です)

 今年、私は、何人もの知人を天国に送りました。突然の旅立ちに驚いた身近な人もいました。別離の悲しさも感じますが、これからも必ず訪れる、周りの人々や自分のその時を、どのように迎えられるのかと不安にもなり、どんなに立派で有能な人でも、自分の死や最期の時は決められないということを実感しています。漠然と、その時はすべての人に平等に訪れるとわかっていますが、いつどのようにかはまったくわかりません。人知を超えた存在に「委ねる」しかありません。

 私は、心や日々の生活にゆとりがある時、よく「神様に委ねて」と思います。しかし、思いもよらない出来事に出くわすと、途端に心が乱され、翻弄され、自分がどんなに無力で、「委ねる」ことこそ、どんなに難しいことかと味わいます。

 しかし、そんな自分の中に起こってくる様々な思いを通して、気づくこともたくさんあります。自分の人生は自分の設計通りにはいかないと思いながらも、いつも自分で何とかしなくてはと責め立ててしまう、どこかでスッキリとする解決を求めてしまう自分の愚かさです。

 ルカによる福音書10章に、有名な「マルタとマリア」という二人の話があります。忙しく立ち振る舞うマルタは、目の前のことに心を奪われ自分の思い通りに動かないマリアについて不服を言ってしまいますが、イエスはそんなマルタに、親しく「必要なことはただ一つ」と諭しました。

 私はまず、38節に記された、「イエスを迎え入れた」マルタの心の姿勢に倣いたいと思います。マルタはまず、イエスを自分の日常に迎え入れ、自分のあるがままの思いを聞いていただき、イエスから「委ねる」ことの大切なメッセージを受け取ることができたからです。