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委ねる

松尾 太 神父

今日の心の糧イメージ

 あなたが身も心もすべて委ねることのできる相手はだれですか、と尋ねられたら、家族、親、きょうだい、親友、などと答えると思うのですが、思わずふとんが思い浮かんだりするのは、わたしだけでしょうか。

 考えてみると、ふとんはえらいものです。来る日も来る日も、身も心も疲れてくたくたのわたしたちを休ませ、安らぎを与えてくれるのです。横たわる者の重みを何も言わずに受け止め、せんべいのようになっても働きます。ふとんなしで床に横たわるのは、なかなか難しいものです。夏なら少しひんやりして気持ちいいかもしれませんが、寒くなってくると、畳でもそのまま寝ようとは思いません。ちゃんとふとんを敷きます。

 ところで、ふとんに身を委ねているとき、つまり、寝ているときというのは、聖書によると、神との語らいのときでもあります。

 旧約聖書の創世記に登場する少年ヨセフは、よく不思議な夢をみました。(参 37章)

 ヨセフは、夢の謎を兄たちや両親に解き明かすのですが、父親から特別にかわいがられていたヨセフは、その夢について語れば語るほど、兄たちの恨みを買い、ついにはなんと奴隷としてエジプトに売られてしまう、という物語なのですが、すべての出来事のあとに明らかとなるのはヨセフたちを救いたいという神の望みが、夢を通してあらわされていたということでした。

 その身を横たえ、神にすべてを委ねて夢をみるとき、ヨセフは神の望みを知り、また、神が自分に委ねておられる使命についてよく知るようになったのです。

 手を止めて、あれやこれやの思い煩いを一旦離れて、身も心もふとんに委ねてゆっくり休むときに、大切なことが見えてくることがあるかもしれませんね。