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共存共栄

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 我が家には13歳のメス猫がおり、名前をララといいます。小さな頃はいたずらっ子で、私が「コラ!」と𠮟ることが多かったのですが、最近はお利口さんになりました。むしろ私の方がいたずらをして、ふざけてララに布団をかぶせると、「ニャア」と甘えた声でもぞもぞ、かわいい顔を出してきます。

 そんなララにとって、生活の変化が訪れました。ある日、友人から電話があり、「コロナ禍で収入が減り、猫を飼えないアパートに引っ越すことになって...」と、悩みを打ち明けられました。私は「考えさせて」と伝えた後、妻に相談すると開口一番、「家であずかりましょう」と言ってくれました。すぐに出かける準備をして、都内の我が家から車で高速道路に乗り、横浜に住む友人の家に着きました。すると、愛ちゃんという名の大柄でつぶらな瞳のメス猫が友人に抱かれていました。

 友人は名残り惜しそうに愛ちゃんをゲージに入れ、「よろしくお願いします」と言うと、「いい子にするんだよ」と語りかけました。

 我が家に到着し、妻がシャワーで体を洗い、私がドライヤーで乾かした後、愛ちゃんは大きな体をすぼめて部屋の隅から様子を伺っているので私が撫でようとすると、「カァー!」と爪で引っ掻こうとします。

 きっと新たな環境で不安だったのでしょう。一方、黙っていないのがララでした。大柄な愛ちゃんに向かって「ギャオー!」と威嚇し、2匹は別々に過ごすことになりました。

 その後、愛ちゃんは我が家に慣れてきていますが、今もララとは別の部屋にいます。人間も猫も、時に互いを理解できない現実があります。私は心の中で、〈ララと愛ちゃんが仲良くじゃれ合う日が来ますように――。〉と、願い続けています。