私はムカデが苦手です。ムカデはまず、あの姿が恐ろしいし、咬まれると痛そうなので怖いのです。皆さんはいかがでしょうか。
先日、あるお店に入りました。オーナーご夫妻のお話によると、築140年の古い民家を10年越しでリノベーションされ、使われているのだそうです。外観は素朴で木造の風合いがよく、中も柱や梁を残し、壁を取り払った、広さを感じさせる居心地の良い空間になっていました。庭には季節の草花が自然な雰囲気で植えられ、手入れをされていて、とても心穏やかな気持ちになりました。
お店の周りは自然に囲まれているので、たまに虫のお客さんもやってくるらしく、お話に出てきたお客さんは、まさに私の苦手なムカデでした。ムカデさんは、そっとお店の中に入ってきて、床に落ちていた水を飲んでいたのだそうです。
その後ご夫妻は、そっとまた外に出してあげた、ということでした。
「共存しているんです」とお二人は柔らかく笑って話してくださいます。聴いていた私までもが、なんだか苦手なムカデさんが愛しく感じられてきました。
そういえば以前、落ち葉を掃いていた時、ムカデに遭遇した私が、「どうして神様はムカデを創ったんだろう」とつぶやくと、シスターHがそれに応えてくれたことがありました。「人間にとってはそう思える生き物も、神様にとっては違うんだろうね」。
自分中心に物事を見ることから少し視点を変えるだけで、違った景色が見えてくる、そして、怖いという感覚から愛しいと思える感覚に変えられる。神様の慈しみのまなざしのもと、互いに生かされ、そして豊かにされていく者の一人として、ご夫妻の姿とシスターHの言葉は、とても大切なことに気づかせてくれました。