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喜びの日

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

 40年余り前のこと。夫の仕事の関係で11歳の長女を頭に9歳、5歳、2歳の男児を連れてアメリカのコロラド州デンバー市で暮らした。

 初めての異国暮らしに胸弾ませながら、幼い子連れで不安だった。数年前、家族でカトリックの洗礼を受けたので、近くの教会で信者登録をした。すると世話役の方がすぐに我が家の様子を見に来て、皆に呼びかけたのだろう、不要の台所用品や家具、子供の玩具まで次々に届けられた。立派な鏡台もあり、「誰にお礼を言ったらいいのでしょう?」と、その方に聞くと、「天からの贈り物ですよ!」と笑顔でウインクされた。こうして瞬く間に家の中は整い、新生活の歯車は回りだしたのである。

 帰国直前に日記で調べたら、僅か一年間に、招いたり招かれたりした家族ぐるみのつきあいが何と60数回もあった。毎週1~2回会食している。そんな中で、ここの人たちの生活は意外に質素で堅実で、教会を軸に善意溢れる人間関係があることを知った。 

 迎えたクリスマスでは、行きずりの会う人毎に「メリークリスマス!」と笑顔で挨拶する。町中に温かい雰囲気が醸し出された。クリスマス毎に「互いに愛し合いなさい」というキリストの言葉(ヨハネ13・34)が人々の胸に蘇るからであろうか。

 イヴの大聖堂は晴れ姿の市民で溢れんばかり。私たちも異国にいることを忘れてクリスマスの歌を日本語で歌い喜びあった。

 あの世話役のホワイトさん宅で夫人手作りのご馳走を頂き、贈り物を交換したり、ピンポンをしたり、満ち足りて帰宅した。

 コロナ禍で世界中が大変動しているが、真の救い主キリストの誕生を祝うクリスマスの喜びは変わらない。その大きな喜びが益々平和に輝きだすことを願ってやまない。