安らぎ

シスター 山本 久美子

　現代社会は、ストレスが多く、安らぎがないと言われます。確かに自分の生活をふり返ってみても、便利でいろいろな情報をすぐに簡単に得ることができる反面、それゆえに落ち着かず、疲れているように感じます。幼少の頃は、ゲームやパソコン、携帯電話はおろか、家庭に自家用車や固定電話もありませんでした。しかし、それが当たり前で、特に不便さも感じず、時間にも心にも余裕がありました。しかし、今さら昔の生活に戻ってみても、却ってストレスを感じてしまうかもしれません。

　さて、「安らぎとは何」と問われたなら、一体どのように応えることができるでしょうか。現代人は、目に見えない、イメージさえ抱くことができないことについて説明することが難しいという人が実に多いのではないでしょうか。安らぎとは何かと問う人も少ないかもしれません。

　キリスト教では、亡くなった人々のために、「永遠」の安らぎを祈ります。永遠とは、この世の「時間」や「空間」を超えて、いつまでも限りなく続くという意味です。現代に限らず、いつの時代も、この世に生きるすべての人は、いろいろな苦しみやストレスを味わい、それらから解放されることは決してありません。

　イエス・キリストは、そんな私たち、人間のために、あえて人となり、同じ人間の生活に入り、ご自分の生と死、復活を通して、永遠の安らぎの道を示されたのです。この世での人生の中では、安らぎを得ることがあっても永遠に続く確かなものではありませんが、「道、真理、いのち」であるイエス・キリストは、「永遠のいのち、安らぎ」を、身をもって約束してくださいました。それが、キリスト者である私たちの信仰の礎なのです。