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ときめき

今井 美沙子

今日の心の糧イメージ

 今から10年ほど前、夜の8時ごろ、近所のスーパーへ行った。

 私が買い物をすまして、出口を出て、5、6歩歩いた時に「失礼します。おじゃましました」という幼児の声が聞こえた。

 立ち止まってふり向いてみると、3歳と2歳くらいの幼い女の子が、スーパーのドアに向かって丁寧に頭を下げていた。
 それは身体全体であいさつしているように感じられた。
 傍に乳飲み子を抱いた、その姉妹の母のような人が立っていたので、「まあ、お行儀がいいですね おかあさまが丁寧にお躾けになっているんですね」と、私は思わず声をかけた。
 その人はにっこりと微笑んで「ありがとうございます」と御礼を言った。
 その後、その親子は駐車場のある少し暗いところへ歩いていった。

 その後ろ姿を見送っていたら、その姉妹のスカートが金色に光り輝いていた。「あっ」と驚いているうちに、親子の姿は消えてしまった。

 とても不思議な感覚にとらわれ、一体、何があったのだろうかと思い思い、家に帰り、一日の用事をすまして、夕の祈りを唱えている時に、「あの児たちは天使だったんだ」と思い至った。

 その瞬間の聖なる心のときめきは今も鮮明に覚えている。

 スーパーをこの世にたとえるなら、私たちもこの世を去る時、あの女の子たちのように「失礼します。おじゃましました」と丁寧にあいさつしてあの世へ向かうべきだと教えられたのである。

 天使たちは時々、天上から下界へ降りてきているのだと実感した夜であった。