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挨拶

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 私は車を運転する時、ラジオを聴くことが多いのですが、好きな曲が流れると少し遠回りをして、その曲が終わってから帰ることがあります。思春期の頃によく聴いた曲が流れると、懐かしい記憶に導かれるサインを受信したような感覚になります。

 ある休日の午後もラジオから好きな曲が流れ、川沿いの道を車で走っていました。信号のない十字路で一時停止すると、左から来た車も停まり、〈お先にどうぞ〉と手で合図をしてくれるのが見えて、私は先に車を走らせました。その人の顔は見えませんでしたが、私も片手を上げ、〈ありがとう〉と合図を返し、その十字路を進みました。私の合図が相手に伝わったかどうかは分かりませんが、穏やかな気持ちで運転できました。

 話は変わりますが、私は昨年からYouTubeで『ぽえとりーサロン』という番組を始め、詩人やアーティストをゲストに迎えて、インタビューや朗読・弾き語り等をしていただいています。私は毎回、〈ゲストの方が楽しめるようにもてなしたい〉と決意して、語らうように打ち合わせをした後、収録に臨みます。ゲストの方がリラックスするためには、まず自分から心を開いて場の雰囲気を和ませること、その第一歩として、心を込めてあいさつをするように意識しています。そして、何気ない会話で切り出し、ゲストの方が関心をもつ話題について質問することで、徐々に互いの心は開かれ、収録では満たされた時間が紡がれますゲストの方が笑顔で帰途につく、その後ろ姿を見る時、〈よい一日だったなあ・・・〉と私も安堵できています。

 「今日出会う誰か」を配慮しながらあいさつと会話を重ねることは、私たちをより豊かなものへと変えてゆく、と実感する日々です。