私が東京に住んでいた頃、毎週土曜日の午後11時頃になると、ある修道士さんが修道院から自転車に乗って新宿の歌舞伎町まで出かけて行った。時折、就寝前に下の道路を見ると、自転車に乗ってゆっくりと歌舞伎町に向かって行く姿が見えた。修道士さんは不思議のメダイを持って歌舞伎町の入口に立ち、道ゆく人に配りに行くのだ。
不思議のメダイを作るように聖母マリアから使命を託された『聖女カタリナ・ラブレ』の昭和30年初版発行の小冊子を、その修道士さんからもらった。その本の「まえがき」には「一般の小冊子の頁をめくる時と同じようには、どうか、この飾り気のない本に対してなさらないように、お願いいたします」と書いてあり、私にとって聖なる本の一つになった。
1830年7月18日から19日の真夜中にかけて、パリのバック通りにある愛徳姉妹会の修練院に入った修練女カタリナに聖母がご出現になり、その年の11月27日、再びご出現になる。この時、聖母は人々に配布してほしいと願う不思議のメダイを示されるが、その直前に印象的な場面がある。聖母が小さな金色の十字架が上部にある地球儀をもって、哀願するような表情で神様にお献げしているお姿である。
地球は、今や自然環境の破壊においても、戦争においても、破滅に向かっていると言っても過言ではない。このままでは共に生きる社会どころか、誰もいない地球になってしまうだろう。そうならないためにも、不思議のメダイにある祈り、「原罪のけがれなく宿られたマリアよ、あなたにより頼むわたしたちのためにお祈りください」と唱え、一人ひとりの心に響く思いを大切に、共に手を携えて地球のために十字架を担う時が来たのではないだろうか。