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松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 私が神父になりたての時、先輩の中に、イエス・キリストを味わう黙想指導のとても上手な神父がいました。色々な人から話を頼まれ、人気がありました。

 老年になればなるほど、大活躍です。80を過ぎた頃、あるときひどくショックを受けている様子が窺えました。話を聞くと、少し前に道を歩いていて、ぼーっとなったのか、倒れてしまったのだそうです。

 周りの人は「仕事のやり過ぎだから仕事を受けるのを控えるように」と忠告し、先輩もそれに従おうとしました。専門のお医者さんに聞くと、老人性の失神とのこと、本人も活動を自粛していました。

 しばらく経って、彼に仕事の依頼がまた来るようになりました。本人も恐る恐る、少しずつ仕事をし始めました。そしてなんとか順調に回復していきました。

 その後、周りから見ていて分かったことがあります。仕事がいっぱいある時は、不思議とその先輩はとても元気が良いのです。ところが、仕事が減ってくると、元気が無くなり体調が優れなくなるのです。

 私は、人間そのようなものだと、余り心に留めることなく過ごしていましたが、コロナ社会になり、気づいたことがあります。先輩は、仕事で人と出会い、生きがいを感じていたからこそ、元気を保てたのだと。

 私も人と会う機会が少なくなり、ステイホームを続けていくことで、生きる気力が衰えてぼーっとすることが多くなったような気がします。

 先日、ある神学生がお世話になった神父を訪ねて帰ってきたとき、「別人のようになっていました。以前は活発でしたが、コロナ禍の中、おっくうになっている」と、その様子を報告してくれました。

 人と出会ってこその神父なのだと、改めて置かれた場所のありがたさを感じたのでした。