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越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 生きるために必要最低限度の条件とは、言うまでもなく衣食住を確保することでしょう。人は衣服をまとい、しかるべき住居がなければ、生きて行くのは難しいですが、なにより食べ物がなければ、活動することも、成長することも、生きていくこともできません。ですから、食事というのは極めて重要な行為です。

 その上で、いろいろ工夫をしながら、分相応の生活ができるよう努めていきます。そして、家族の場合でも、ある共同体の団体生活でも、人々が食卓を囲んで食事をすることを、ギリシャ語のアガペー、愛と呼ばれることがあります。それは人びとがお互いの愛情を表す最も自然な行為だからでしょう。美味しい食物を共に食するということは、愛の交わりを表していると言えるのではないでしょうか。問題は、その食事が身体の成長と活力のための糧になっているかどうかでしょう。

 何でも、食べればいいというものではありません。身体の健康にとって害になるものは、摂取してはいけません。その上、人間は単なる動物ではありません。不滅の魂を有する神の肖像とでもいうべき尊い生命体なのです。それを忘れず、現世だけがすべてと勘違いせず、人には皆、神さまから授かった尊い魂があるということを信じて、イエス・キリストがかつて誘惑の極限で叫ばれた言葉を想い出しましょう。

 それはイエスが荒れ野で断食された時、「これらの石がパンになるよう命じたらどうか。」と誘惑されたときに答えられた、「人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言葉によって生きる。」という言葉です。(マタイ4・4)それこそ真の糧です。