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授かったもの

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 時節柄、世界的にオンラインでの活動が盛んになりました。

 このことが、白杖を使って歩くため「移動困難者」である私にとって、チャンスになっています。平常時なら移動が困難でない健常者の間でもオンラインが「普通の選択肢」になったため、私も執筆以外の仕事で遠慮せずにオンラインを希望できるようになったからです。依頼者も、オンラインならと気軽に連絡をくださるようです。しかも、お互いに往復の心配がないメリットも発生するのです。この時期に人類がオンラインという交流手段を授かっていたことは不幸中の幸いだと思います。そしてこれは、将来も活用され続けるでしょう。

 ところで、この春ある大学で講義したとき、学生たちがリポートの中で口々に不満を打ち明けていました。オンライン授業なのに学費はそのままなのはひどい、対面で授業がしたいのに・・・、友達と会えない、入学式もできなかった。

 気持ちは痛いほど分かります。私だってさみしいです。家族との食事は1年以上していないし、友達とも会っていません。

 でも、もしネットのなかった時代にコロナ禍が起きていたら、私はさみしいどころか、失業し、世の中から孤立していたでしょう。実は、オンライン授業を希望する学生も少なくありません。ネットが移動困難の窮地を救い、多くの人に仕事の機会を作り、会えなくても話せるようにしてくれたことは事実であり、まさに「授かった」ものではないでしょうか。

 いうべきことはいう必要があるとしても、私は不満を並べるよりも、いまあるこの環境に感謝して突破口を見つける姿勢を失わずにいたいと思います。

 「青い鳥」のように、授かったものは、気づけばここにあるのかもしれません。