▲をクリックすると音声で聞こえます。

慎ましく

森田 直樹 神父

今日の心の糧イメージ

 「慎ましく」その生涯を送った聖人といえば、聖ヨセフを私は思い浮かべます。そして、昨年の12月から1年間、カトリック教会は「聖ヨセフの年」を過ごしています。

 大工として実直な生活を送り、神さまへの信頼ゆえに、身ごもっていたおとめマリアを妻に迎え、そして、ヘロデ王の刺客を避けて、家族をエジプトへと避難させ、ガリラヤで慎ましい生活を送り、その生涯を閉じました。

 特に目立ったことをしたわけでなく、別名「沈黙の聖人」ともいわれますが、自分に課せられた役割を着実に黙々と果たし、家族を守り抜いた聖人だったともいえるでしょう。

 この聖ヨセフの姿に倣って、現代を生きる私たち一人一人も、神さまから自分に与えられた能力を他者のために生かし、また同時に、自分に与えられた十字架を背負いながら、慎ましく生きるようにと招かれています。

 この聖ヨセフの姿は、神さまの前に正しく謙虚であることは言うまでもなく、神さまと共に生きる人間の本来の姿を示しているとも思います。

 現代に生きる私たちにとって、刺激的な出来事や出会い、何かを劇的に成し遂げることなど、華々しい何かを追い求めがちかもしれませんが、静かに淡々と、自らの分をわきまえて慎ましく生きる聖ヨセフの姿は、人間の本来あるべき姿を示しているのだと私は思います。

 何気ない日常をどのように慎ましく生きていくか、それが問われているのではないかと思うのです。なぜなら、神さまとの出会いというものは、特別な時や場所で出会うのではなく、日常の何気ない生活の中でこそ神さまと出会っていくからです。

 私たちの日常生活を改めて見直して、聖ヨセフを模範として、神さまと共に謙虚に歩んでいきたいと思います。