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いつくしみ

遠山 満 神父

今日の心の糧イメージ

 先日、クロアチア人の友人が催してくれた、オンラインによるロザリオの祈りの集いに参加させてもらいました。その時、その友人が語った、ロザリオに関する思い出は、とても印象的でした。

 彼の国、クロアチアは、旧ユーゴスラビアから分かれた一つの国です。

 クロアチアが、まだユーゴスラビアだった時代、国は、共産主義政権によって治められていましたので、カトリック教会に対する迫害は、過酷を極めていました。カトリック信者は、カトリック信者であると言う、ただその理由だけで、苛めを受けました。共産主義政府は、彼らが信仰を失うように、あらゆる手段を講じました。

 彼が、徴兵制に応じて、兵役の義務を果たしていた時の事です。カトリックの信徒は、一つの冷暖房の設備のない兵舎に集められ、そこで就寝するよう命じられました。冬場、夜間の外気温が零下になる中、彼らは、そこで夜を過ごさなければなりませんでした。大変な苦しみだった事でしょう。その時彼は、仲間を誘って、皆でロザリオを唱えたのだそうです。それによって、「心が温まった」と彼は語ってくれました。共産政権は、彼らが信仰を失うように、そのような事をしたのですが、かえって彼らの信仰を強める事になってしまいました。

 私は、彼の体験を聴きながら、使徒パウロのローマの信徒への手紙の次の一節が頭に浮かんできました。「神を愛する者たち、つまり、御計画に従って召された者たちには、万事が益となるように共に働くという事を、私達は知っています」。(8・28)

 苦しみの中にいる時、神に憐れみを乞うて祈りたいと思います。「この状況が、自分にとって、また多くの人にとって、益となりますように」と。