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いつくしみ

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 「いつくしみ深き 友なるイエスは 罪とがうれいを とり去りたもう・・・」

 多くの人々によく知られ、愛されている賛美歌の一つ「いつくしみふかき」である。結婚式でもよく歌われてきたようだ。キリスト教をよくご存じない出席者の方々も、オルガン奏者がこの曲を弾き出すと、歌詞カードを見ながらちゃんと歌っておられる。そんな時、私はほっとしたり嬉しくなったりしているが、考えてみれば不思議なことだ。クリスマスとクリスマスの聖歌が、キリスト教の本来の意味から少し離れた形で日本の文化に定着しているように、この賛美歌も儀式の時の歌として認識されているのだろうか。確かに心に響く歌だと思われる。

 この曲はとても自然で親しみやすく、人が歌いたくなるような旋律を持っている。歌詞も、悩みや悲しみを負わざるを得ない人の心に寄り添い、染み入ってくる。

 イエスはいつくしみ深い方、つまり、弱いものを守り、大事にして愛情を注いでくださる方なのだが、それだけではない、私たちの友であるのだ、とこの歌詞は言っている。しかもただの友だちではない、世の人たちすべてから見捨てられても、決して見離さず、そばにいる友だというのである。人にとって最もつらい孤独な時に、慰め労わりながらそばにいる、それがイエスの深いいつくしみの形なのだと、この歌は教えてくれている。

 花嫁花婿を祝福するつもりで、歌詞カードを手にした出席者たちも、歌いながら自分も励まされている気持ちになるのではないだろうか。人の心を少しでも支えることができれば、それは歌の本望であり、私たちの本望なのである。