辛いこと、悲しいことが起こったときには、つい部屋に閉じこもりがちだ。立っているのさえしんどくなり、頭から布団をかぶって一日中、寝転んでいたい気分になるのだ。心を固く閉ざし、自分の中に閉じこもっていたくなる、と言ってもいいかもしれない。
そんなとき、わたしは無理にでも外に出て、家の近所や公園を散歩するようにしている。家の中に閉じこもっていると、心の中で、辛さや悲しさがますます大きくなってゆくからだ。ネガティブな感情に呑まれてしまう前に、無理にでも外出用の服に着替え、運動靴を履いて外に出る。陽射しを浴び、大地を踏みしめ、風を感じながら前を向いて歩きだす。
すると、はじめは躊躇していても、歩いているうちに少しずつ気持ちが変わってくる。閉ざされていた心の扉が、外に向かって少しずつ開き始めるのだ。開かれた心の扉からは、つらさや悲しさが外に向かって流れ出してゆく。逆に、外からは、世界を満たした命の喜びが心に流れ込んでくるのを感じる。道端に咲いた花や、さえずる小鳥たち、空を流れる白い雲、温かな太陽の陽射しが、生きる喜びを心に運んできてくれるのだ。しばらく歩くと、初めに感じていた耐え難いほどの辛さや悲しさが、少しやわらいでいるのを感じる。心がなごむと言ってもいいかもしれない。
怪我や病気で外に出られないときは、好きな本の頁を開くといい。しばらく読んでいるうちに、心が本の世界に向かって開かれてゆくのを感じるだろう。開かれた心の扉から辛さや悲しみが外に流れ出し、逆に本の頁から生きてゆくための力が心に流れ込んでくるのを感じるだろう。
辛いとき、悲しいときにこそ、心の扉を大きく開け放つよう心がけたい。