
私たちは、人生の歩みの中で、様々な新しい出発を経験します。例えば、新しい学校に入学したり、新しい会社に就職したり、結婚生活を始めたり、引っ越しをしたり、新しい家族を迎えたり、新しい年を迎えたり、などなど数多くの新しい出発です。
それだけでなく、新たな出会いや、新たに経験することなど日常生活においても新たな出発を経験します。言い方を変えれば、私たちの人生や日常は、注意深く眺めてみると、新たな出発に満ちている、と言うことができるかもしれません。
若い時は、新しい出来事や出会いに対して、期待と希望に満ち溢れています。新たな出発に対して、おそれることなく、立ち向かっていくことが数多くあるかもしれません。
ところが、歳を重ねるにしたがって、今までのしがらみや失敗が頭の中を駆け巡り、一歩を踏み出すことにしり込みしてしまうことも多くあるかもしれません。
新たな出発には、時に不安と恐れもつきまといます。うまくいくだろうか、成功するだろうか、などと未来の出来事に対して、抱く漠然とした不安と恐れです。
聖書に出てくる「預言者」と言われる人たちも、神さまからの新しい使命に直面して、同じような不安と恐れを抱いていたと伝えられています。そのような時、神さまはいつもこう告げられていたのです。「わたしは必ずあなたと共にいる」と。(出エジプト記3・12)
新たな出発をする時、神さまが必ず共にいてくださるとは、なんと心強いことでしょうか。将来、様々な困難や、失敗があるかもしれません。それでも、神さまは必ず一緒にいてくださるのです。この心強い支えを心にとどめながら、不安と恐れに縛られることなく、新たな出発を積み重ねていきたいと思います。

子供たちの父親である最初の夫が突然死した時、妹の夫が手紙をくれました。
彼にも似たような経験があったのです。最初の奥さんが交通事故で亡くなっていたのです。
「私にも同じような経験があるのでわかりますが、あなたがどんなに見捨てられたような気持ちでいるかわかります。でも、あなたの人生はもう決して今までと同じということはあり得ません。はっきりと理解し、自分自身に受け入れるのは辛いことですが、この失われたものは失われたままです。あなたにはもう新しい人生が始まっています。自分では気がつきにくいでしょうが、そうなんです。あなたのこれからの課題は、自分と子供たちの新しい人生を美しく幸福なものにするためにどういう方法を作り出していくかということです。もちろん、また笑える日がきます。それこそが彼の遺志です。これからも彼の優しさがあなたを守ってくれるはずです。もちろん彼は好きで死んだのではありません。しかし、彼はあなたのおかげで男が人生に求める夢を与えられたのです。素敵な妻に心から愛されるというのはそういうことです。あなたの信仰があなたの助けになりますように。あなたがこれから先、新しい力を見出し、自分の周りのあらゆることについてはっきりとした判断と答えを見出していくのは、他の誰にでもなく、自分自身の中にです。」というのです。
彼はカトリックではありませんでしたが、ベルギー人でした。日本人はここまではっきりと書くということはしないかと思います。それでも、私は、この手紙に本当に助けられました。そして、この後でも色々な困難はありましたが、その度に彼の手紙が新たな出発の後押しをしてくれました。