
旧約の預言者エレミヤは、ある日、主なる神から陶工の家に行くように命じられます。陶工は、ろくろを使って仕事をしていました。彼は、粘土で一つの器を作っても、気に入らなければ自分の手で壊し、作り直していました。その時、主の言葉がエレミヤに臨みます。「イスラエルの家よ、この陶工がしたように、私もお前達に対してなしえないと言うのか」。(18・6)
この数年、私達が体験した事は、この預言の中で語られている事に似ています。それは、形あるものが作られては壊され、また作り直される事の繰り返しです。災害によって家屋が壊され、再建されても、また壊される事があり、為政者によって法の枠組みが壊され、再考されても、また壊される事があり、その繰り返しの最後に、パンデミックによって社会のシステムが壊されました。今、世界は眞に混沌としています。
このような状況下で苦しんでいる私達に、パウロは希望の言葉を語ってくれます。彼は言います。「キリストと結ばれた人は誰でも、新しく創造された者なのです」と。(2コリント5・17)
創世記には、原初の世界が混沌としていた事が記されていますが、これは科学の世界でも認められている事です。創世記には、これに加えて、このような混沌としていた世界に秩序を与えられたのが、神であると記されています。それは、神の子であるキリストと結ばれている人が、経験している事、つまり、自分の生活が如何に混沌となっていったとしても、キリストに結ばれているなら、再び生活に秩序を取り戻す事が出来るという事です。
混沌とした現代世界の中で、多くの人がキリストに結ばれて、新たな一歩を踏み出す事が出来ますように祈ります。

私たちは日々、他愛のない会話を交わしています。家族とも職場の同僚とも日常会話は大事なコミュニケーションですが、人生についての本音や夢、または悩みを話せる友がいれば、その人はかけがえのない存在といえます。
平成の時代は心を病む人が多く、令和になっても、心の回復は重要なテーマです。そのために大切なことは、互いに心を開いて語らう場所を持つことだと、個人的には感じています。
私は定期的に「陽だまりサロン」という名の読書会を主宰しています。第1回目は昨年9月に行い、読書後、お茶を飲みながら互いに近況報告をしました。その集いは新型コロナウイルス感染拡大の影響で中断していましたが、3密を避けて開催し、再出発の会となりました。
ドイツ人司祭、ウァルデマール・キッペス神父様の書かれた『本当の自分を大切に生きるために』という本を、5人の参加者で順番に朗読しました。この本はキッペス師が書いた日本語の文章を、主に私と妻がより伝わりやすい言葉に校正したものです。キッペス師は現在90歳で、日本で長年スピリチュアルケアによる心の癒しと本当の生き方について探究し、人々に伝え続けています。
第1章では、「自分を大切に思うことができてこそ人を大切に思えること」「時に不安のある人生でも天を信頼する心を養うこと」「自分の長所や日々与えられていることを見出し、感謝すること」について記されており、共有しました。わかち合いの時間では、日頃、他人に話せないことを打ち明け、涙する方がいるなど語らいのひと時でした。
これからも参加者が互いにかかわりあって、本当の自分を生きるために、このサロンの場を皆さんと共に育んでいきたい、と思っています。