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思いやり

西田 仁

今日の心の糧イメージ

 私には子供が4人おり、これまでもずっと子供達には「どんな大人になっても良いから、思いやりのある人になって欲しい」と言い続けて来ました。

 ある日、ひとりの子が一生懸命頑張ったご褒美にお菓子をあげた事がありました。その時、残りの3人が「ずるい」と私に訴えて来ました。この時、私は本当に悲しい気持ちになり、子供達に話しました。

 「父さんは、君たちのお菓子を取り上げて、それを彼女に渡しましたか? 君たちは何かを失いましたか? 自分自身が何も失っていなくて、何も損をしていなくて、何も悪いことが起きていないのに、自分達の姉妹に良いことがあったのに、何がずるいのですか?どうして、一言『良かったね』と言ってあげられないのですか?」と。続いて、私の子供時代の話をしました。

 私は3人兄妹の一番上で、二つ下に妹がいます。小学校5年生の時に、私はずっと欲しかった変速ギア付きの自転車を買ってもらいました。なぜ買って貰えたのかは覚えていませんが、誕生日やクリスマスのような特別な日では無かった事は覚えています。私は喜んで家の周りを何周も何周も走っていました。その様子を見た小学校3年生の妹が母に「お兄ちゃん良かったね。嬉しそうだね。」と言ったのです。私はその時、自分より年下の妹が、羨ましがらずに「良かったね」と言ってくれたことが深く心に残りました。

 子供達に「君たちにも、叔母さん(私の妹)のように他の人の幸せを喜んであげられる人になって欲しい」と言いました。

 こう話していて、ふと聖書の言葉が頭をよぎりました。「あなたの隣人をあなたのように愛しなさい」。(マタイ22・39)

 思いやりとはイエスのこの言葉に尽きるように思いました。