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約束

松村 信也 神父

今日の心の糧イメージ

 今から35年前、当時広島の長束という市内から少し離れた山裾の場所にイエズス会修練院はあった。(現在は東京に移転)

 修練院の朝は早い。明け方5時に起床、洗顔後すぐに外に出て体操が始まる。眠気覚ましの体操だ。当初は辛かったが、次第に気持ち良い朝の体操になる。その後、部屋に戻って修道服に着替え聖堂へ。ここで1時間の黙想が始まる。黙想の後、ミサが始まり、ミサ後、食堂で朝食。毎食事の前後は当番制で祈り、食事中は朗読もした。食事の片付けが終わると自室に戻り、簡単に部屋の掃除と決められた場所の掃除をした。

 朝9時、講話室で修練長の話、続いて種々の勉強をした。午後は殆んど庭の仕事に従事した。敷地面積が広いため働く場所は沢山あった。殆ど毎日2、3時間の労働をしたあと、シャワーで汗を流し修道服に着替え、5時、聖堂で夕の祈りをした。夕食、片付け、そして毎晩休憩室で談話した。夜8時半、集会室で修練長、ときに副修練長から翌日の福音箇所の話を聞いた。9時自室に戻り意識の糾明 。そして就寝、一日の終わりである。

 この修練院生活2年目の終わり、誓願を前に修練長と面談した。「誓願立てますか」と修練長から問われた。「自分は無理です。三誓願を立てる自信はありません」と答えた。それは修道会を辞める意思表示であった。修練長は少し間を置き「完全に出来る、否、出来たから誓願を立てる人は誰もいないのです。『三つの誓願に向って歩みたい』その意志を持って誓願を立てるのです」と諭すように告げた。その言葉が今も私を存続させる。

 神と約束した「誓願」。未だ不完全である。しかし"約束"を忘れても赦して下さる神の慈愛に気づき、いつも原点に戻る自分でありたい。