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約束

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 友人の長男はハル君といって、幼稚園に通う可愛い男の子である。変身ロボットが大好きで、誕生日には、スーパーマーケットのおもちゃ売り場にかっこよく飾られている憧れのロボットを、両親が買ってくれる約束になっている。誕生日までの3ヶ月の間、ハルくんは待ち遠しくて仕方がなかった。幼い子にとっての3ヶ月は、大人の数年にも当たるのではないだろうか。

 そしてとうとう、その日はやって来た。ところが、両親は都心のデパートに用事が出来、ハル君のロボットも一緒にデパートで買うことに決めたのである。スーパーに行かないと分かると、ハル君はショックを受けて激しく泣き出した。長い間待たされるうちに、ハル君はスーパーであのロボットを買うのだ、と繰り返し思い続けて心に焼き付けてしまったらしい。友人夫妻はハル君を説得するのに 大変苦労したそうだ。

 ようやくハル君はデパートへ行ったが、ロボットを抱えた時にはすっかり夢中になっていて、泣いたことなど忘れてしまった様子に、両親もほっとしてハル君を抱きしめたとのことだった。

 私たち大人も、5歳児になっていることがある。自分の思い通りに約束が守られなかったと憤る時、「将来を約束されていた」のに、成功しなかったと絶望する時などである。だが約束というものは、その本質において叶えられるものなのだ。だから最後まで生きてみないと分からない。

 神が祈りに応えてくださるという約束も、スーパーの売り場に固執してしまうと、より良いかたちで果たされていることに気づかないのである。良き両親の約束は果たされる。それを信じて生きることが出来れ ば、私たちは幸福な子どもであると言えよう。